リクリ「ユーザーのコンテクストから考える ウェブサイトの情報設計」参加レポート

先日 5/18 に大阪本町にあるパソナテックさんの会場にて開催されたリクリセミナー第11回「ユーザーのコンテクストから考える ウェブサイトの情報設計」に参加しました。

KDDIウェブコミュニケーションズにて情報設計を日常業務としてされている、藤田 淳子さんが講師。1時間の講義と5時間弱の実践ワークショップという大変充実した内容でした。

当日、大阪ではエンジニアやデザイナー向けのイベントが多数開催されていたようで、本当はこのセミナーに来たかった方も多かったと聞き、1時間の講義内容について、許可を得て搔い摘んで紹介させていただきます。

情報設計 IA を学ぶ

講義の対象は Webサイトの設計ということですが、「IA(インフォメーションアーキテクチャ)」と言われる情報設計の概念や、その手法を交えた内容が主でした。
Web 系のセミナーにはよく行きますが、この「IA」に関する内容のセミナーは実に少ないです(大阪は特に)。
講師の藤田さんも「インフォメーションアーキテクト」という肩書きでいらっしゃいますが、「IA」を職としている方は珍しく、恐らく Webデザイナーやディレクターという肩書きにあたる方が学んでもいいと思います。
私自身、IA は Web だけでなく「伝えるメディア」には必須だと思っていて、今こそ、このタイミングで非常にいいテーマを取り上げていただいたセミナーだなと思いました。

なぜ「IA」が必要なのか

この時代、ずばり情報過多です。
私が初めて IA に触れたのは1997年、まさにインターネット黎明期でした。
でもその頃から、IAの業界では今のような情報過多を予測しており、今後はIAの概念は必須になるんだと記された論文が多くありました。
情報過多だと、情報の誤認や迷い、また不慣れになってしまいがち。だからIAによって「探しやすく」「接しやすく」し、情報が示す目的にユーザーを導くことが必要です。ただし、これはあくまでも情報を「構造化」しただけに留まります。

モノからコトへ

昔は家電なんかも出せば売れる時代だったといいます。モノがそもそも無かった時代だからです。でも今はモノがたくさん溢れ返っています。そうなれば人はモノでは満足できなくなり、興味や関心は「コト」に向くようになります。モノに対する「コト」。これはつまり人の体験を意味します。この体験が充実しているかどうかで、人はそのモノに満足するかしないかが決まる、今はそんな時代になりました。UX(ユーザーエクスペリエンス)が言われるようになったのもこういう訳です。

Webサイトは通過点に過ぎず

これも昨今言われている通り、デバイスの多様化によって、人が情報を見られる手段が増え続けています。PC だけだったのが、携帯電話、スマートフォン、タブレット型 PC、しまいには Google GLASS のようなデバイスまでもが登場する。そうなれば Webサイトはこの中で通過点にすぎず、デバイスに合わせて情報を構造化するだけでは人を容易に「体験」へ導けなくなってしまいます。
では何を考えて設計していかなければならないのか?ということです。

コンテクストとは

日本語では文脈と訳されますがこの言葉と意味はとても難しいです。講義の中では「ユーザーの属性・状態・状況で、どのようにしてユーザーが情報に接するか」ということでした。今回の講義の最重要テーマ「コンテクスト」です。

私がコンテクストを例に説明するときはこう話しています。
人が何か飲みたいと思ってドリンクを買う時、例えば真夏にスポーツで楽しんだ後であれば乾いた喉を潤し水分を補給する、真冬であれば体を温めるためにホットドリンクを飲む。同じ「飲む」という体験であっても、その場に置かれた人の状況、時期や時間が違えば何を飲むかも変わるということ。

これはごく当然のことなのですが、ドリンクをWebサイトのコンテンツと置き換えたらどうだろうか。ユーザーがアクセスする時間や時期に変わらず、Webサイトは変わらずずっとそこにあります。特定の情報を掲載しているWebサイトであれば、この情報を欲するユーザーのコンテクストを考えて、情報を設計、またはコンテンツを考える必要があるということです。

コンテクストを考える上で重要な「時間軸・そのときの感情」

講義では、Webホスティングサービスの Webサイトコンテンツの設計を例に語られていました。コンテクストを考える時、中心になるのは「時間軸」です。
例のホスティングサービスについて関心のあるユーザーの時間軸を定義します。まずホスティングを必要とする「課題」が起点、そしてサービスの他社比較をし、契約に至り、サービス開始後の運用、というのが時間軸です。

次に考えるのはそのときの感情はどうか?ユーザーはどういう状態にいるのか?という点です。
色々な他社のサービスとを並べて比較をしたいのに、ホスティングサービスの概要が何ページにも渡っていれば、そのサービスを諦めてしまうかもしれません。
ユーザーがゴールまでに至らないということは、この時間軸と感情に沿っていないコンテンツがある、もしくはそれが無く、そこで落ちている可能性が高いということです。

進化した IA の考え方

IA はずいぶん前からある分野ですが、UX やコンテクストという考え方に基づき、IA の手法も進化していると言います。
講義では「図書館」が例になっていました。「図書館情報学」という学問は、数多くの蔵書を分類し、インデックスを付与して本を管理しやすくするものというものです。これだけだと「構造化」に留まってしまいますが、最近の図書館ではリラックスできる広々とした空間デザインや、パーソナルスペースを設ける、本だけでなくインターネットが常設といった「体験」まで設計された新しい図書館をデザインすることが、まさに新しい IA の手法なのではないかということです。

実際のワークフロー

最後にこれらを踏まえたWebサイトのコンテンツを考えるワークフローです。

①課題は何なの?
 ↓
②ターゲットは誰なの?
 ↓
③それに必要なコンテンツは?
 ↓
④それをカテゴライズする

ここまでが構造化です。
この一つ一つに何のために?誰がどういう感情か?そして次に何をするのか?を考えることが必要です。
ここでようやく次のフローです。

⑤ワイヤー・画面設計
 ↓
⑥評価
 ↓
⑦デザイン(ここで初めてビジュアルデザイン)

ですので、講義中でも言われてましたが「ちょっとワイヤー起こしてくれない?」といきなりオーダーされても「できません」というのが自然な答えになります。

まとめ

この後、グループごとにワークショップとなりました。それは 5時間弱にも及び、それもごく一部のステップなのです。
Webサイトの企画・初回ディレクション、こういうフェーズについては「IA」はやはり基礎工事であり、画面の前にしっかり設計すべきものがまだまだ多くあることを再認識しました。
社内サイトの構築が例にありましたが、会社では色々な部門があってそれぞれの立場によって意見もあると思います。クライアントとお仕事する場合も、色々な要望が上がると思います。でもそれだけをWebページに詰め込んだり、ワイヤーをまず起こすのは、もうこれからの時代のWebサイト制作としてはほぼ意味を持たない、ユーザーに価値をもたらさないものを作ることにもなりかねません。
1997年、学生時代に「IA」をかじったものの、しばらく見なく聞かなくなった分野だなと感じていましたが、UX という概念をはじめ、IA が進化した姿になり、本当に必要な時代がようやくやってきたのだと思えるようになった、そんなセミナーでした。