UX デザインで考えるコンテンツ設計

先日、ベースキャンプ名古屋にて開催された WCAN mini 2015 Vol.1 「UXデザインプロセスを活用したコンテンツの評価方法」(講師: 長谷川 恭久さん)の参加レポートとなります。

このセミナーでは、主に Web サイトにおけるコンテンツの実状と把握、その評価やより良いコンテンツを提案するための UX デザインの手法をレクチャーとワークショップを交え、5時間で学ぶというものです。

良いコンテンツを設計し提供するためには、ユーザーを理解すること・今のコンテンツを評価すること。これらは制作プロセスでは当たり前なことでも「できていない現実」に改めて気付かされます。いくつか自分なりの解釈も含めて、特に印象的だった内容をハイライトとしてレポートします。

良いコンテンツとは?

「良い」は誰が決めるのでしょうか。利用者、ユーザーです。コンテンツ提供者は、ユーザーになり代わって良いコンテンツを考えなければなりません。セミナー中に、とある Web サイトをチェックしましたが、大手ですら利用者が求めているコンテンツを適切に提供できていないケースがありました。コンテンツは十分すぎるほどあるのに、重複したり、表記が分かりにくく、どこに行っても辿り着くことができなかったり。
ユーザーが求めているものと、提供者が提供したいものは本当に一致しているのかを疑い、その事実をまず認知することから始まります。

「良い」を決めるためにすべきこと

膨大な情報量の中、わずかな時間の中で、良いコンテンツを得ることをユーザーは望んでいます。ユーザーは抱えている課題があって、Web サイトを訪れるはずです。それが何かを見極め、適切なタイミングでコンテンツを理解させ、課題を達成させることが Web サイトの意義です。コンテンツを設計する時、次のようなシチュエーションになっていませんか。

  • 好みやトレンド「最近は青より赤い色を使うサービスが増えているので」
  • 偉い人の意向「クライアントはフラットデザインが良いと言っているので」
  • デザイナーの個人プレー任せ「デザイン経験者である彼女に任せているので」

これではいつまでたっても「良い」コンテンツから遠くなります。

UX の手法でコンテンツを考える

①ペルソナ

私たちが利用者、ユーザーに成り代わるために、その人物像を具現化し設定するのが「ペルソナ」です。これも恰好のターゲットに仕立て、想像だけで都合良く設定していませんか。そのために Google Analytics などで利用者のデータを整理し、なぜこのペルソナを設定したのか「理由」を説明できることがポイントです。データが手元になければ、まずそれを測定するべきです。

Persona長谷川さんのワークで使用したペルソナの例
属性が多ければ良いというものではなく、根拠に基づき簡潔に設定されているか。

②ジャーニーマップ

Web マーケティングに携わる方なら一度は聞いたことがあるかと思います。ジャーニーマップには次の要素が含まれます。

  • サービスの利用前/利用中/後の「時系列」で書かれている
  • ○○した、というペルソナの行動に基づいた記述がある
  • サービスに接触した記述がある
  • 行動と接触がそのペルソナにどう影響したか、またその時の感情を評価する
    (※サービスはモノの場合もあります)

ジャーニーマップは検索するとたくさんのパターンが見つかります。Google による検索結果をご覧のとおり、壮大なマップほど魅力的に見えますが、凝って作るほど「仕上げた」達成感があるため、そこで思考停止してしまう場合があります。あくまでもユーザーを理解するツールであることを忘れてはなりません。

Journey-Map

長谷川さんのワークで使用したジャーニーマップの例
時系列でサービスに接触したポイントだけではなく思考や感情を考察する。また、成果物に必要以上の時間をかけない。

改善のためのコンテンツ評価

ペルソナとジャーニーマップによる「ユーザーの理解」が把握・共有できれば、次にやることは現存のコンテンツの棚卸しです。サイトクローラーのようなツールを使用することで、サイトのページ一覧をレポーティングできるものがあります。レポートはスプレッドシートにまとめ、Google Analytics によるページビューや滞在時間などのデータを付加することで、定量的な評価ができます。一方でジャーニーマップをもとに、コンテンツの理解のしやすさ、見つけられやすさといった定性的な要素でも評価し、改善策を考えます。ここでは定量的・定性的の両方の評価がポイントとなります。さらに Web サイトの運営をどうするかで実現性を考慮した改善策にしていきます。

ワークで検討した改善のフレームワーク

ワークで検討した改善のフレームワーク
課題と対策は三段階の優先度で、新しいコンテンツ案は、ジャーニーマップの分類に対するコンテンツに整理することで分類しやすくしている。

「理解」と「改善」のための UX デザイン

様々な Web サイトをご覧になっても、コンテンツは確かに存在しています。制作して時間が経過していれば、それは多すぎるくらいかもしれません。現在の制作環境は、Google Analytics やツールも充実し、競合の多くの情報がインターネット上にあり、周囲との比較もしやすい状況です。だからこそ、まずすべきことは利用者・ユーザーを理解すること、そして量と質による適切な評価で地道にコンテンツを考えることです。UX デザインの手法はそれに役立ちます。
セミナー終盤に、長谷川さんが私たちにかけて下さった言葉が印象的です。

「今までは制作に多くの時間を費やしてきました。でも今は技術やツールの進化により制作時間を短縮できるようになりつつあります。つまり、利用者や配信者の理解と制作後の改善に多くの時間を割り当てられるようになったということです」

そのプロセスこそが UX デザインなのではないかと思います。

ワークショップのススメ

最後にワークショップについて。
このような UX デザインの手法を取り入れたワークショップは、手と頭を両方使う絶好の機会です。会議や PC の前に座ってデザインしているだけでは、ユーザーや良いコンテンツもなかなか見えてこないのではないでしょうか。また、ネットに散在する「手法」を見よう見真似で試すだけでは、正しくフレームワークに沿って考えられているかどうか不安です。実際、UX デザインの手法やツールはクライアントに見合うよう、アレンジが必要なケースが多いです。柔軟な思考を身につけるためにも、ワークショップにたくさん参加し、慣れてみるのが一番だと思っています。デザイナーやディレクターに限らず、できればクライアントと一緒になって、ワークショップに参加されてはいかがでしょうか。

長谷川 恭久さんのワークショップは、レクチャーの分かりやすさも好評で、手法の形にこだわらず、参加者のレベルに合わせた成果物のアドバイスもして下さるので、初めての方にもおすすめです。機会があればぜひ参加してみてください。
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謝辞
本記事掲載にあたり、長谷川さんに査読いただきました。ありがとうございます。