ライティングはUIデザインである

低下するライティングスキル

私たち日本人は、文脈や背景の定義を必要とせず「相手を察すること」で疎通を図る「ハイコンテキスト」なコミュニケーション文化だと言われています。LINE や SNS でも短いテキストで会話が成立することは日常です。手書きからメールへ、そのメールは今やチャットに代わり、テキストの発信はどんどん増えています。
一方で、語彙力やライティングスキルが低下していると感じることはないでしょうか。記事のコピーペースト氾濫、分かりにくい文章表現、何かを PR する長文が書けない──。こうした問題はデザインやエンジニアリングの職域に関係なく、成果の質を下げているかもしれません。

ライティングは UI であること

Basecamp や Campfire を展開している 37signals による『Getting Real』の中では ”Copywriting is Interface Design” が提唱されています。優れたインタフェースは、ライティングされたものすべてであり、ピクセルやアイコンにこだわるように文字にこだわる。つまりインタフェースデザインはコピーライティングであると書かれています。
スクリーン UI のボタンのラベル、テーブルの項目名を考えるときは、自分の頭の中にある言葉だけで考えるのではなく、使うユーザーと場面を想像してみることです。その一画面では、例えば商品を選んでいるユーザー、今や買おうかと思い悩んでいるユーザー、もっと商品のことを詳しく知りたい思うユーザーなどがいるはずです。アプリやサービスの世界に入ってくれたユーザーを歓迎し、サービス提供側は、そのユーザーのためにライティングされた UI で導く必要があります。

ライティングを構成するワーディング

ライティングという書くスキルからもう少し UI にフォーカスすると、「ワーディング」というスキルがあります。ワーディングとは、言葉遣いや言い回しを決めることであり、ワーディングによって「世界観が作られる」と私は考えています。
ワーディングの正攻法は多くあります。UI とライティングの関係性に初めて気付いたのであれば、ライティングに関する多くの良書も参考になります。
以下では、最近の UI でありがちな、ワーディングの禁じ手を取り上げたいと思います。

ワーディングでしてはならないこと

  • 他社のワーディングを参考に(模倣)する
  • 括弧や装飾記号を多用する
  • 同じ意味の語彙を多く使う

他社のワーディングを参考に(模倣)する

“「いま」起きていることを見つけよう。”
これは Twitter 日本版のヒーローヘッダーです。Web やアプリではこうした “〜しよう” という呼びかけ型のコピーが多く見られるようになりました。ニュースを読もう、書いてみよう、検索してみよう。Twitter のように広く知れたサービスでなければ、こうした呼びかけはとても奇妙です。他社には他社の世界観があります。ワーディングでは、流行や模倣でオリジナルの世界観を築くことはできません。どこどこ社のサービスはこういうワーディングだから同じようなテイストにする、という発想では決して良いものは生まれません。

括弧や装飾記号を多用する

これは2バイト文字を扱う特有の問題かもしれません。装飾記号(■□◆┏など)で目立たせようとするのは、まるでプロではないことをアピールしているようです。また括弧記号も日本語変換辞書には多く含まれています。特にメルマガによく見かける墨括弧【 】で囲まれた文字。見やすいと思われたのか、文字や項目を酷く装飾して文字数を無駄にしています。記号には正しい用法があり、飾りのためにあるものではありません。時代遅れのメール文化から足を洗い、記号ではなく言葉に集中すべきでしょう。

同じ意味の語彙を多く使う

同じアプリで保存、完了、というような同じ意味のラベルやメッセージは混ざっていませんか。また日本語のラベルには名詞だけでなく、動詞のもの(例えば “保存する”)も増えています。これはフラットデザインの小さな影響で、テキストリンクだけではボタンとして認識されないことで、ユーザーの操作イメージに近い言葉に進化しました。こうした過程で統一性が崩れていくことがあります。世界観を維持するのは、たくさんの語彙ではなく、統一されたワーディングです。多くの人が関わるチームでは、独自のワーディングブックなどを共有するとよいかもしれません。

これからのワーディング

コンピューターが AI によって進化すれば、コミュニケーションは音声よりもテキストメッセージングが先駆けになるかもしれません。まるで誰かと話しているかのように、サービスを進行する UI はスクリーン上のボタンや画像だけではなく、対話型のメッセージ UI も含まれるでしょう。
そうした流れで、サービス提供側がまず考えなければならないのは、自社のワーディングです。担当者の頭の中にあるワーディングだけでなく、自社やそのブランドの統一されたライティングを築き上げることが求められます。
幸いにも私たち日本人は、短歌や俳句、落語や漫才といった「言葉」を大切にしている文化の国でもあります。グラフィックやスクリーンだけではなく、人間味が感じられるワーディングをこれからも一緒に考えていきたいと思います。

長谷川 恭久さんとの対談 Podcast Automagic

Web やデザインに関するセミナー講演などで定評がある長谷川 恭久さんは、ブログ could をはじめ、電子書籍や Podcast といった様々なメディアで情報を発信されています。
今回、その Podcast「Automagic」にゲストで呼んでいただきました。
フリートークの収録は初めてでしたので上手く話せていない点も多々ありますが、長谷川さんのリードにより、なんとか無事に配信できる対談にはなったようです。

はじめに自社で開発・運営している iOS アプリ「ジオメモ」のデザインに触れながら、そして話は「デザイナーの意義」という大きなテーマにまで及びました。デザイナーの肩書きを持っていない私がそういうテーマを話すのは僭越ですが、デザインの領域で仕事をする上で、一度しっかり考えたいテーマでもありました。

お話した内容についてダイジェストを記します。
Podcast を通じて、普段から何気なく接している「デザイン」というものを考えてみるヒントやきっかけになれば幸いです。

「長谷川 恭久さんとの対談 Podcast Automagic」の続き…

コンテキストと共感から始めるUX改善

この記事は「#UX Tokyo Advent Calendar 2015」第22日目の記事です。

2年前に公開したこのスライドは、とある勉強会のご依頼があり、UI と UX の違いや、基礎を理解するためにと作成したものです。公開からだいぶ経っていますが、何かのきっかけでシェアされたのか、今でも多くの方に見ていただき、もう少しちゃんと練って作ればよかったと少し後悔もしています。

「コンテキストと共感から始めるUX改善」の続き…

スマフォアプリUIでやってしまう失敗ケース

この記事は「#UI Design Advent Calendar 2015」第18日目の記事です。

スマートフォンアプリの普及により、UI デザインの需要は年々増しています。最近になり、アプリ UI デザイナーとしてお仕事を始められた方も多いかと思います。
UI デザインは、原則や関連知識の理解を深めることも重要ですが、ケーススタディとしてみることでスキルの習得も早くなります。

今回は、これまでユーザビリティの観点で監修したアプリ UI の中から、ユーザビリティテストのスコアリングが低くなる傾向のデザインパターンをご紹介します。それらは少し見直すことで、スコアが改善されるというのもまた特徴です。やってしまいがちな失敗 UI ケースの入門として、ご参考になれば幸いです。

「スマフォアプリUIでやってしまう失敗ケース」の続き…

UX デザインで考えるコンテンツ設計

先日、ベースキャンプ名古屋にて開催された WCAN mini 2015 Vol.1 「UXデザインプロセスを活用したコンテンツの評価方法」(講師: 長谷川 恭久さん)の参加レポートとなります。

このセミナーでは、主に Web サイトにおけるコンテンツの実状と把握、その評価やより良いコンテンツを提案するための UX デザインの手法をレクチャーとワークショップを交え、5時間で学ぶというものです。

良いコンテンツを設計し提供するためには、ユーザーを理解すること・今のコンテンツを評価すること。これらは制作プロセスでは当たり前なことでも「できていない現実」に改めて気付かされます。いくつか自分なりの解釈も含めて、特に印象的だった内容をハイライトとしてレポートします。

「UX デザインで考えるコンテンツ設計」の続き…